言霊(ことだま)

言葉には不思議な霊力が宿る、と古代の日本人は考えていました。

日本の文献で初めて”言霊”が登場するのが「万葉集」、そして山上憶良の「好来好去の歌」の中に出てくる”言霊の幸(さき)わう国=言葉の霊力が幸福をもたらす国、日本。”というフレーズがあります。

真実は口伝えの中にしか残らない、と古代では書いたことより話したことの方が優先され、それほどまでに言葉は大切にされていました。

現代でも、例えば結婚式では「離れる」「切れる」などの言葉を使わない、というマナーが残っています。

口に出したものは聖なる力を持つ、そうであるならば自分の発する言葉は気をつけよう、良い言葉を使い、言葉の持つエネルギーで自分の周りや身の回りの人を良い空気で満たしたい、そんな気持ちになります。そしてそこには、古代の人々の知恵があるように感じます。

世界はシンプルで美しい。

『万葉集』-巻5-894山上億良 (好去好来こうきょこうらいの歌)

神代より 言ひ伝て来(け)らく そらみつ 倭の国は
皇神(すめかみ)の 厳(いつく)しき国 言霊(ことたま)の 幸(さき)はふ国と
語り継ぎ 言ひ継がひけり 今の世の 人もことごと
目の前に 見たり知りたり 人さはに 満ちてはあれども
高光る 日の朝廷(みかど) 神ながら 愛での盛りに
天の下 奏(まを)したまひし 家の子と 選びたまひて
大命(オホミコト) 戴き持ちて 唐(もろこし)の 遠き境に
遣はされ 罷りいませ 海原の 辺(へ)にも沖にも
神づまり 領(うしは)きいます 諸々の 大御神たち
船の舳に 導きまをし 天地の 大御神たち
倭の 大国御魂(みたま) 久かたの 天のみ空ゆ
天翔(あまかけ)り 見渡したまひ 事終り 帰らむ日には
又更に 大御神たち 船の舳に 御手うち掛けて
墨縄を 延(は)へたるごとく 阿庭可遠志 値嘉(ちか)の崎より
大伴の 御津の浜びに 直(ただ)泊(は)てに 御船は泊てむ
障(つつ)みなく 幸くいまして 早帰りませ(894)
反歌
大伴の御津の松原かき掃きて我立ち待たむ早帰りませ(895)
難波津に御船泊てぬと聞こえ来ば紐解き放けて立ち走りせむ(896)

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