「あなたはこの歌で何を伝えたいのかい?」
2010年にロサンゼルスで歌のレッスンを受けたとき、最初に先生から言われたこと。
伝えたいこと?
当時の私は何も答えられず、黙ってしまいました。
そんなこと1度も考えたことなかったし、その時はただ自分が好きだから歌を歌っていました。
「客席にはお客さんがいて、みんなあなたのことを注目している。
あなたの歌からは何も伝わってこない。パッションが必要なんだ。」
ショックでした。かなり凹みました。
でも、持ち前のポジティブ思考が発揮(笑)
さすが、エンターテイメントの聖地ロサンゼルス!
技術じゃない、熱意なんだ!
歌っているときに考えていることは、上手に歌おう、間違わないように歌おう。
例えば、
「ここで息継ぎをしよう」
「次は高い音だから重心をしっかりとらないと」
「ここの発音気をつけないと」
と。
練習は上手になる訓練。
意識して練習することが必要。
でも、ステージに立ったときもその癖が付いていて、
上手に歌わないと、間違ったらいけない。
そういうことにとらわれて歌っていて、全くお客さんのことを考えていない自分に気づきました。
音楽を楽しんでいなかった。
「もっとリラックス、リラックス。エンジョイ!」
先生に何度も何度も言われました。
余計な力が入りすぎていたのですね。
日本人は真面目です。
日本に帰ってからは、自分は何を表現したいのか、模索していました。
いろいろなジャンルの音楽を聴きに行ったり、新しいことにチャレンジしてみたり、本を読んだり。
その中で見つけたことがありました。
当時、習っていた歌の発表会で、客席にいたおばあさんが私の演奏で涙を流してくれたこと。
選曲のこともあったのかもしれませんが、私の歌った演奏が人の心に届いた瞬間でした。
歌の上手な人はたくさんいる。
私は人の心に響く音楽をしよう。
いろんな人がいろんな感情を持って音楽を聴きに来ている。
今ここで音楽を聞いている間だけでも幸せな気持ちになって、
来てよかった、そういう気分で帰ってもらえるような演奏をしよう。
これが私の音楽で伝えたいことです。
「アイディアは移動距離に比例する」
太平洋を超えて学んだことは、今の私のベースになっています。
その時の発表会の演奏です。
荒削りですが、そのときのいちばんの演奏でした。